※ ここでは、どんな方にもご理解頂ける様に、出来るだけ「専門的な表現」の使用を控え【POINT】を簡単にご説明いたします。
まずは、「レジオネラ属菌」の増殖原因と「クーリングタワー(冷却塔)」の条件を組み合わせた「リスク」をご説明します。
レジオネラ症患者が最も多く報告された季節は、「初夏(梅雨時)」。 日本の場合、暑くてじめじめと湿度が高い梅雨のシーズンが、レジオネラ症の発生に関与しているのではないかと考えられています。
一連の研究が進んでいる米国の場合。
1990年から2005年までに米国CDC (疾病管理・予防センター) に報告があった23,076人のレジオネラ症患者について分析した研究では、秋と夏に報告された患者数が多かったと言う事です。
秋(9-11月) が30%、夏(6-8月) が29%、冬が23% (12、1、2月)、春(3-5月) が18%。月別では、一番多かったのは「8月(11.2%)」で、一番少なかったのは「2月(5.6%)」 と報告されています。
さて、同じ土壌(土の中)で生息する代表的な微生物と言えば「真菌」。いわゆる「カビ」です。日本の場合、空間中を浮遊するカビの量が最も多くなる時期は、「梅雨時」や「秋雨時」。ここまでは「レジオネラ属菌」も同じです。
やはり、微生物が空間中を浮遊するのに「温度」「湿度」が大きく関係してくるのは間違いないでしょう。
カビは「真冬」にはもちろん減少します。しかし「真夏も減少」するのです。それでは、どうしてレジオネラ感染症が最も多くなるのは「真夏である8月」なのでしょうか?
実は原因の一つとして、私たちは、衛生管理の悪い冷却塔・クーリングタワー (オフィスビルの空調)が動き出す、またはフル稼働で動いていて、居住空間に撒き散らかされる「季節」だからだと考えています。
左図は、オフィスビルの空調用で屋上などに設置されている「開放型」
「直交流式」と呼ばれる、最も一般的なクーリングタワー(冷却塔)です。
冷却水を冷やすために強制的に外気(風)を取り込み、風が水と直接接触する事によって、水が冷やされます。(設定は一般的に「-5℃」)
「水」に外気である「風」が直接あたる事から、「開放型」と呼ばれて、その「風」が設備の横から入るので「直交流式」と呼ばれます。
強制的に風を取り込んで水を蒸発させるので、当然の事ながら上部のファンから、冷却水が霧状(エアロゾル)となり環境中に飛散されます。
この時、冷却水中にレジオネラ属菌が大量発生していた場合、エアロゾルと一緒に「大量放出」されます。そして、人間が呼吸をする事により人体の肺に入ると「感染」するとされています。
1976年にアメリカ合衆国ペンシルベニア州で米国在郷軍人会の大会が開かれた際、参加者と周辺住民21人が原因不明の肺炎にかかり、一般の抗生剤治療を施したにも関わらず34人が死亡した。 これにちなんで、「在郷軍人病」とも呼ばれています。
冷却塔の型や条件で変わりますが、一般的な計算式を用いて単純にご説明します。
仮に都心オフィスビル屋上に設置されている小さな100RT程度の冷却塔が1台あるとします。 冷却塔から冷却水が飛散する「 飛散量」は、 循環水の「0.1%」程度。冷却塔の循環水量の目安は、1時間あたり78トン程度。 これが仮に6時間稼働した場合、
78,000(リットル)×0.001(0.1%) ×6 (時間) = 「468リットル」
つまり、「468リットル」の冷却水が大気中・街中に飛散しています。それも、小さな100RT程度の冷却塔が、たった「1台」だけです。
当然、「250RT」「500RT」なんて大きさは当たり前の様に至る所にあり、それが数台、数十台と言うレベルで屋上に設備されていて大量の飛散水が街に降り注ぎます。
何かしらの原因で、冷却塔に「風」が上手く入らず、冷却水が適正温度まで落ち切らなければ、冷却塔のファンはターゲットの温度に到達する為に、一生懸命に「フル稼働」します。ファンがフル稼働する時間が長くなればなるほど、飛散水も増加します。
仮にこの冷却水中に「レジオネラ属菌」が大量に繁殖していた場合、どうでしょうか? 長時間に渡り、大量のレジオネラ菌が空調用給気・外気ダクト・窓からビル屋内・室内へ混入・そしてレジオネラ症に感染。また施設周辺で生活する人々にまで感染リスクが出て来るでしょう。
それでは、どうすればこの冷却塔内の「レジオネラ属菌」をなくせるのでしょうか?
「主たる原因」から探っていきましょう。