一般的な循環式温浴施設の場合、冷めたお湯は、「浴槽」→「ヘアーキャッチャー(集毛器)」→「ろ過器」→「熱交換器」へと流れます。
左図の様に「シェル&チューブ型熱交換器」では、ボイラーで温められた高温のお湯を熱交換器内に流し、循環されている「ぬるいお湯」を外側から再加熱します。再加熱されたお湯は設定された快適な温度となり、再び浴槽へ戻って循環を繰り返します。
しかし、熱交換器の配管内に温泉成分に含まれる鉱物(ミネラル) が付着すると、熱源から伝わる熱伝動が悪くなり、浴槽から来る「ぬるいお湯」は効率良く再加熱出来なくなります。
循環しているお湯が、設定した温度になっていない事をセンサーが感知すると、設定温度まで上昇させる為に、どんどん余計なエネルギーを使って設定温度を目指そうとします。
※「シェル&チューブ型熱交換器」は、洗浄ノズルが届かないので「高圧洗浄」は出来ません。
鉱物スケールが配管内や熱交換器内に付着した場合、どのくらい余剰エネルギーが使われているのでしょうか?(熱交換ロス)
左図のようにカルシウムスケールが0.5mmつくと、「消費エネルギー」は約60%上昇します。
熱交換器が「小型プレート式」で、簡単に取り外しが出来るタイプであれば、「強酸溶解洗浄」(塩酸等で漬け置き)すれば後部スケールは溶けて除去できるでしょう。
※酸洗浄の場合、腐食・取り扱いの危険性は高くなります。
しかし、温浴・浴場施設の場合、鉱物スケールの堆積は「熱交換器内」だけではありません。
「塩ビ配管内」にも付着・堆積するのです。
配管内に付着・堆積するこの現象が最も厄介で、配管の内径を詰まらせることで、ポンプの「圧力損失」を招き、熱交換ロスに加え、更に膨大な余剰エネルギーを費やす事になります。
それでは、さらに詳しくお話しいたしましょう。
現在、設置・通水されている「既設配管」であれば、詰まっている異物としては、「100%鉱物」(カルシウム・マグネシウム等) のみと言う事は、まずあり得ないでしょう。
左図の様に、温浴設備のほとんどのケースでは有機物 (粘性物) が設備内・配管内に付きはじめ (ぬめり)、それを抱きかかえる様に、温泉成分のカルシウム・マグネシウム・鉄・マンガン・硫黄(不溶性)が混合され始めます。
そこへさらに、有機物や鉱物が上塗りを重ね、その「層」がどんどん厚くなって「閉塞」という状況に陥っていきます。
温浴施設の配管は「耐熱塩ビ製」がほとんどですが、浴槽は鉱石・タイル・セメント (目地)などが使われていますので、そのような環境で「強酸溶解洗浄」を行うと、「浴槽」(※石の種類にもよります)や「タイル・目地・ろ過材」自体を溶かしてしまうため、循環系統の「強酸溶解洗浄」が出来ません。
CALFA NSSシステムは、酸を使わずに「有機物(バクテリア)の除去」と「鉱物スケールの除去」が同時に行えてしまうのが最も優れた利点・特徴です。
除去された鉱物スケールは水と比べて「比重」が重いので、浴槽底部、ろ過器の2点に除去・堆積されます。これまでパイプ内で「石」のように、カチカチだったスケールは、CALFA NSSシステムの作用でイオン分解され、「砂」のようになります。
ご存じの通り、小さな浴槽でもFR (吸込口)は、「子供や老人」の体が吸いついて離れなくなり、 溺れるような事故防止を目的として、ほとんどのケースで「2つ以上」設置されます。
この複数あるFR (吸込口)の「スケール付着状態に差がある」場合は、「レンガ」(水よりも重ければ何でも良い) で最も状態の良いFR (吸込口)の穴を20%〜50%程度あえてふさぐというオペレーションです。
水流(洗浄水)は、最も状態の良い処理能力の高いFR (吸込口)へと流れていきますが、そのFR(吸込口)をある程度塞ぐと、状態の悪いFR (吸込口)に「水圧」と「流量」がかかるようになります。そうすると、その状態の悪いFR (吸込口)を通過する洗浄水の流速が上がって行きますので、局所的にそして効率的に状態の悪いFR(吸込口)側の「不要物」及び「カルシウムスケール」が除去出来るようになります。
スケール除去に関しましては、洗浄時間が長ければ、より有効ですので、「休館日」を利用して施工されることをお勧めします。
除去されたスケールは手で簡単に
潰せる程、「軟化」していた
地域により泉質は様々ですし、設備・配管内への付着・堆積物の組成も様々です。ご紹介している写真のケースは、非常に珍しい黒色のスケールで「マンガン」が多い地域の泉質となっています。
温泉施設の場合、付着・堆積している物がどんな種の鉱物であったとしても、それを抱きかかえ、鉱物をスケール化させる発端となるのは、全て「有機物」(ぬめり)が原因です。
よって、設備・配管内に有機物(ぬめり)をいかに発生させない様に「日常のケア」をするかが最も重要なキーポイントとなるわけです。
「洗浄剤」と同時に「推奨殺菌剤」も、ご提案させていただくのは、トータル・ソリューション(全ての解決策)での「ご提案」でなければ施設管理者様にとって「価値が低い」と考えるからです。
人間の"「血管」と「コレステロール」の関係"と全く同じで、血管が詰まってから病院に行っても事態はすでに深刻で「長期入院」の可能性、最悪のケース死に至るかもしれません。
設備も同じです。毎日の「殺菌管理」によって配管にコレステロールをたまらない様にし、数ヶ月に一回の「洗浄」という配管ドックでリフレッシュする。
最も、大切なのは、「日々の配管の健康管理」です。
長期にわたり洗浄をしていなかった設備・配管内には、写真の様な 「大量のスケール・バクテリア」が付着・堆積している可能性があります。
それがパイプから一気に除去されますので、 ろ過器を詰まらせ循環を妨げる可能性もあります。(ろ過器から浴槽までの配管の詰まりは、浴槽底部に排出されます)
その際は、洗浄開始から数十分までは、必要に応じて数回、逆洗浄を実施し、ろ過器に詰まった不要物を出来るだけ排出して下さい。
一度リフレッシュを行った後、定期的に洗浄を行っていただければ、酷い状態にはならないハズです。くどいようですが、最も大切なのは、「日々の配管の健康管理」です。この言葉に尽きます。
(施設の平均集客人数、水質、環境などにもよりますが、洗浄は行政が一般的に定める指導通り「6ケ月に1度」を推奨致します)