「温めのお湯」「熱いお湯」等、お湯の温度設定をお客様の好みに合わせて、いろいろと変えりますが、大抵の場合、浴槽の温度設定は、ほとんど38℃〜41℃近辺に設定されています。一般的なバクテリアは31.5℃、レジオネラ菌は39℃を超えた水温で急激に増殖を開始していきますが、水温が60℃を超えると徐々に死滅し始めます。
人間が温泉につかり身体が温まると、当然の事ですが汗が出ます。汗の成分は化学的にはアンモニア(NH3)ですが、アンモニアに含まれる窒素化合物 (N)分はバクテリアのエサ(アンモニア・尿素など)となります。 人間は平均的な入浴で1人600ccの汗を出すと言われています。
温泉が源泉かけ流しの場合はろ過器はありませんが、温泉温度が低く沸かし湯などを行ような循環式温浴施設の場合、「ろ過器」が設置されています。ろ過器がある場合、ろ過器内にバクテリアがバイオフィルムを作り身を潜めているケースがほとんどです。重曹(炭酸水素ナトリウム)泉以外の一般単純温泉で、浴槽が「ヌルっ」とした場合、配管内、浴槽内にもレジオネラ菌などのバクテリアがいる可能性があります。
日本国内の一般的な「単純温泉」は、ナトリウム、カリウム、カルシウム等を多く含み、PHが「7後半」の「弱アルカリ泉」が最も多いとされています。PHがアルカリであることが、なぜ温泉にとって都合が悪いのかは、「これまでの殺菌剤」のページで詳しくご説明します。
ジャグジーや打たせ湯、シャワーは温泉にとっての楽しみの一つですが、水しぶきやミストなどを発生させます。「レジオネラ菌とは」のページでも解説しましたが、温浴設備内にレジオネラ菌が発生している場合、レジオネラ菌がこのミスト状のエアロゾルに乗り人間の呼吸によって肺に取り込まれてレジオネラ感染致します。
(レジオネラ菌の大きさ:2〜5μm)
"レジオネラ"と言っても種類は50種以上あります。そしてレジオネラ菌は"好気性菌(こうきせいきん)"です。 簡単に言うと、 「酸素の存在下で発育する細菌」なのです。上記「5つのキーワード」がそろってしまうと 「増殖」+「感染リスク」 が飛躍的に上がるので特に注意が必要なのです。。
【バイオフィルム形成プロセス1】
配管やろ過器内にバクテリアが付着します。この時点で温浴設備で使用している殺菌剤が水中に行き届いていれば、バクテリア(レジオネラ菌など)を殺菌できます。
「煙の段階で消す」とは、まさに、このタイミングです。 このタイミングであれば、「経費」も「労力」もそれほど必要としません。 この状態であればどんな塩素剤でも殺菌できます。
【バイオフィルム形成プロセス2】
バクテリアが EPS (細胞外多糖) を分泌し「保護膜」を形成します。 これを「バイオフィルム」(生物膜)」と呼び、この状態を「シスト化される」と言います。一度、バイオフィルムでシスト化されると、どんなに優れた殺菌剤を使用しても、バイオフィルム内部にまで殺菌剤が到達しないため殺菌できません。
よって、どんなに塩素剤や二酸化塩素剤などを高い濃度で投入しても、バイオフィルム内部のバクテリアは生き続けます。
【バイオフィルム形成プロセス3】
バクテリアはさらにフィルム(膜)を厚くし 「 Colony 」 (コロニー) を形成し、水中の窒素化合物 (N) をエサにして、さらに増殖・巨大化を始めます。
Colony (コロニー) とは、 複数種のバクテリア(レジオネラ菌含む)が生息し、 内部でコミュニティーを形成していると考えられている「細菌増殖の温床 (おんしょう)」です。温泉の場合、泉質、環境にもよりますが、細菌類以外の微生物も生息している場合が多いと言われています。
【バイオフィルム形成プロセス4】
Colony (コロニー)内部が過密になると、やがて破裂し、バクテリアが一気に放出されます。この瞬間に、生きているバクテリア(レジオネラ菌など)が放出される訳ですが、塩素系殺菌剤が不足していたり性能低下していた環境で増殖したバクテリアは塩素に対して「耐性」をすでに獲得している事が知られています。
このレジオネラ菌の増殖と放出がバイオフィルムの形成によって繰り返えされていると言う訳です。また、 シスト化されたまま(保護された)分離し、水中を浮遊するケースもあります。 この場合、バイオフィルムで自身を守ったまま水中を浮遊するので殺菌剤は全く効果しません。